「船を見る」

 

初演 1997年4月 東京 銀座セゾン劇場


演出家小池博史の原風景である、60年代の海辺の町をモチーフとした作品。 「船」とはその町と外の世界を結ぶもの、外の世界への出口でもある。ノスタル ジーに満ちた海辺の町の光景を詩情を湛えて描きつつ、人間の内にある素朴 で満たされない脱出願望を「船」に託す。


ゆっくりと船が横切る。舞台中央にそびえ立つポールは船のマストのようでもあり、校庭に立つポールのようでもある。ノスタルジックな歌声が 響く。モノトーンの衣装に身を包んだ人々。抑制された動きはやがて激しいダンスとなり、一転、舞台は壮大なヴォイスの場となる。
林檎を食べる女。納豆 売りの歌声。教室の風景。人形と踊る怪しい男。日常的な、それだけに根深い感情が顔を覗かせる。


何処へ行くのか、何処へも行けないのか。
人々はそれでも、ゆっくりとステップを踏む。

 

■作・演出:小池博史
■音楽:菅谷昌弘、中村明一(尺八)、八木美知依(十七絃箏)
■美術:小池博史、福島直美、近藤恵一
■オブジェ:田中真聡、松島誠、宮木亜弥
■ライトオブジェ:森脇裕之
■映像:佐々木成明
■衣裳:浜井弘治 、磯本良一
■照明:関根有紀子
■音響:山本浩一、江澤千香子
■ステージコーディネーター:菊地凡平
■ 舞台監督:安部田保彦


■出演 小川摩利子,松島誠、白井さち子、鈴木美緒、縫原弘子、三浦宏之、小林伸江、小神野貴子、関口満紀枝、寺西愛、中村真咲、ヤン・ツイ・クック