パパタラファイナルフェスティバル ヤノベケンジ&小池博史スペシャルインタビュー

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7月31日〜8月10日まで、流山市生涯学習センターにて開催された”パパ・タラフマラファイナル美術館”にて、現代美術家のヤノベケンジ氏とパパ・タラフマラ演出家の小池博史がトークイベントを開催。

今回、初展示となった、ヤノベさんの「ガリバー&スゥイフト」における舞台美術作品を前に、当時の制作秘話やお互いの印象、制作にかける思いなどを語り合いました。

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ヤノベケンジ氏(以下、ヤノベ)
今日の三人姉妹、すばらしかったですね。久しぶりに生のパパタラフマラのダイナミックな舞台をみさせていただきました。僕はずっと美術家として作品をつくって活動してきたのだけれど、2008年にパパタラフマラさんのガリバー&スゥイフトの舞台美術を作らせていただいて。結構たくさんつくったんですよ。じぶんの展覧会以上にがんばって。でも今日の芝居を見たら、(セットは椅子のみなので)あんなにがんばらなくてよかったのではなかったんじゃないかと。

(一同、笑)

intervew_img_yanobe.jpgヤノベ
小池さんに一緒に仕事しようといわれたのが2007年でした。ちょうど僕が大阪で展覧会を開催していて、そこに見に来てくれたんですね。このときが初対面でした。これまでもファッションデザイナーや建築家などいろんな方と一緒に仕事をさせていただいてきましたが、「合わないな」と感じた方とはあまりお仕事をやりません。でも、小池さんは初めて出会ったときから旧知の仲のような、同じ匂いを感じて、この人となら徹底的にやり合ってもいいんじゃないかと。ある意味、刺し違えてもいいくらいの気持ちでした。そのときはまだ脚本はできていませんでしたが、「じゃあ引き受けます」と言って、僕自身の作品のことや展覧会の世界観を伝えました。
intervew_img_kikh.jpg小池
フム。
intervew_img_yanobe.jpgヤノベ
すると、しばらくして小池さんからとどいた脚本には、既に僕の作品のことや僕自身のヒストリーが織り交ぜてあって。あ、これはきっと(小池さんから僕への)果たし状もしくはラブレターだなと思ったので、ちゃんと返さなくちゃなと思いました。
intervew_img_kikh.jpg小池
あはは。
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その後に、パパ・タラフマラの舞台を見せていただいたんですよ。とにかく、パフォーマーがものすごくて、「これはいかんわ」と。このパフォーマー軍団とは一人では戦えない。ちょうどそのころ、僕は京都造形大学でウルトラファクトリーという、怪しげな造形集団をつくっていたんです。何でもつくれるという工房施設を作って、そこのボスみたいな役割を僕が担っていた。それで、このウルトラ軍団という超造形集団で、あの超パフォーマンス軍団とぶつかってやろうと。

f0165435_3163546.jpgウルトラファクトリーの様子

展覧会並みの舞台美術

intervew_img_yanobe.jpgヤノベ
このとき制作したのが、猫が25~6体、人形が4体、スーツマン、巨大赤ん坊、高級解体娼婦・・・展覧会だとしたら結構な規模になるんですけれども。これらを短期間の間で創らなくちゃなくちゃならなくて。まあ、自分がやると言ったからやらなくちゃならないんですけれども。
intervew_img_kikh.jpg小池
まず、あそこにある赤ん坊の人形。ガリバー旅行記の作家であるジョナサン・スゥイフトの一生を描いた「ガリバー&スゥイフト」というタイトルの舞台で使われたものです。まず最初のシーンで使われています。

※図01

intervew_img_kikh.jpg小池
(銀色の巨大な赤子の顔を指しながら)これは、舞台の一番最後に、あの赤ん坊が巨大化したという設定で登場します。舞台のクライマックスに、この像がにゅう~っと立ち上がるようにして現れるんです。

※図02

intervew_img_kikh.jpg小池
こちらにあるこれは、高級解体娼婦といってるんですけれど、皆さんこれをみると興奮なされるんではないかと思います。女性の方でも通りがかるとみんな「うわー」とか「ぼよーん」とか言うですが。今日、三人姉妹で演じた一番大きな子、彼女がこれを着るんです。
intervew_img_yanobe.jpgヤノベ
僕もびっくりしました。これを、橋本さんがこれの中に入って動くんですよ。

※図03

20110803_0018パパタラ美術館p.JPG図01

20110803_0003パパタラ美術館.jpg図02

20110803_0027パパタラ美術館.JPG図03

IMG_1592.JPG図04

intervew_img_kikh.jpg小池
そして、この後ろ側にあるのが、スーツマン。これも中に人が入っていて、ガイガーカウンターを持って舞台の間ずっと座っているんです。これが最後の方にようやく動き出し、場をかえていくという役割を担っています。このあたりがヤノベさんに創っていただいたオブジェですね。

※図04

intervew_img_yanobe.jpgヤノベ
まあ、出来上がってしまったものはこうやって簡単に説明されてしまうんですけれど。

(一同、笑う)

極限状態で制作した「高級解体娼婦」

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高級解体娼婦はですね、娼婦がその役目を終えて一息つくと、猫たちがこの衣装を全部剥がしにくるんですよ。目玉から鼻から口から腕から脚まで、全部バラバラにはがれると、非常にちんちくりんな、生身の人間が出てきます。そうすると、いかに人間というのが非常に奇妙なバランスできているのかということが実感できるんです。

10/801593_A.jpgガリバー&スウィフト(2008)より

intervew_img_kikh.jpg小池
スゥイフト自身、女性に対してちょっとかわった価値観を持っています。彼は高級娼婦の実態がどうなっているのかなどを詩に書いており、「ガリバー&スゥイフト」の中では、実際にその詩のひとつをエピソードの一つとして描いています。
intervew_img_yanobe.jpgヤノベ
当時、だんだん制作の時間がなくなってきて、でも、高級解体娼婦だけがどうしても、なかなかつくれなかったんですよね。というのも、僕、それまで女の人を創ったことがなかったんですよ。脚本では、解体娼婦のことを「娼婦がばらばらに解体され、最後は屍のように転がる」って・・・こんなの、舞台でどうやってやるんですかって(笑)!
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イメージではわりとエロティックで、これが老人の姿のようにかわっていく—実際、これも目とか口がはがれていくとゾンビのような顔になってくるんですよ—そんなものを、時間がせまってくる中でどうやってつくっていこうかと。

10_8_00725_web.jpgガリバー&スウィフト(2008)より

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ウルトラ軍団は学生がほとんどで「ウルトラファクトリー」って言う工房の中でみんなで創っているんですけれど、学生に高級解体娼婦を創っている自分の姿をみられたくないなあなんて思ったりして。極限状態の中で進めていった記憶があります。

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